第16章

九条遥は疑惑の表情で顔を上げ、黒い傘の下にいる二ノ宮涼介の極度に陰鬱な顔を見た。

「今さら贖罪しようなんて、遅すぎるんじゃないか?」

九条遥は二ノ宮涼介の考えを理解していた。彼は自分がこうすることで六年前の出来事を償おうとしていると思っているのだ。

正直なところ、九条遥が千葉承也の頼みを引き受けたのは、少しは六年前のことが原因だったが、大部分は恋ちゃんを傷つけたくなかったからだ。

「二ノ宮さん、考えすぎですよ。今日こうしているのは、前回千葉承也を殴ったからです。もし二ノ宮さんも同じことをしてほしいなら、私が元気になったら、しっかり殴ってあげますよ?」

二ノ宮涼介は何も言わず、ただ黙...

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