第57章

「九条遥、何の用だ?」

深夜に掛かってきた電話に、羽川陸は面倒くさそうに尋ねた。

もしかして北川初美の使いか?だが彼はずっと九条遥が嫌いだったし、北川初美がそんな愚かな選択をするとも思えない。

「羽川さん、今お時間ありますか?」

「ない」羽川陸はきっぱりと断った。

電話の向こうの九条遥は、数秒沈黙した後、真剣な声で言った。「羽川さん、私に対して良くない印象をお持ちなのは分かっています。でも今日お話ししたいのは、とても重要なことなんです。いつならお時間取れますか?直接お会いしてきちんとお話ししたいんです」

重要なこと……

羽川陸は隣に座る男を横目で見て、ふと悪戯心が湧いた。「不夜...

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