第63章 これは何のもの

洞窟の奥行きは、全部合わせても三メートルに満たない。俺が一歩踏み出したことで、水原琉衣との距離は二メートルを切った。

この距離なら、水原琉衣を助け出せる自信がある。

「気をつけて、落ち着いて!」

俺は再び水原琉衣を優しくなだめ、もう一歩、ゆっくりと前に進んだ。

だがその瞬間、かすかな、何かが動く音が耳に入った。

「琉衣、しゃがめ!」

俺が焦って叫ぶと、水原琉衣は俺の言葉を聞き、一切の躊躇なくその場にしゃがみ込み、両手で頭を抱えた。

そしてその空中、つまり水原琉衣が立っていた時の頭の位置を、刃のようにきらめく爪が薙ぎ払っていった。

俺もその隙に、この野獣の姿をしかと目に焼き付けた...

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