第84章 大火

どれほどの時間が経ったのか、俺は朦朧としながら目を覚ました。視界に映ったのは、心配そうな顔、顔、顔。

「西村晴馬、お前が気絶した時は肝が冷えたぜ。でもまあ、何事もなくてよかった」

俺が目を覚ましたことに気づいた古川陽は、嬉しそうに一言叫ぶと、立て続けに気遣いの言葉を並べた。

「どうだ、まだ頭はくらくらするか? 腹は減ってないか? ここに干し肉が少しあるんだが。水はいるか? 今すぐ汲んでくるぞ」

古川陽がかくも元気そうなのを見て、俺もずいぶん気が楽になった。彼の申し訳なさそうな目つきからして、真相を知ったのだろうということは、考えるまでもない。

だが、今は談笑している場合ではないことも...

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