第88章 劫持

実のところ、俺は戻ってくる道すがら、この変異ヒルの能力を専門的にテストしていた。

すぐに分かったことだが、このヒルは防御不能というわけではない。皮膚に直接触れさせさえしなければ、変異ヒルは人の身体に吸着することはできないのだ。

こいつの恐ろしいところは、その気色の悪い吸血と、人に気づかれにくいという能力にある。

俺は自説の信憑性を高めるため、わざわざ実演までしてみせた。

それを見て、皆の不安はかなり和らぎ、さっき見たような死んだような静けさはなくなった。

「みんな、注意してこのヒルを皮膚に這わせさえしなければ、何てことはないさ」古川陽も同調した。

「でも、この川にいるヒルは一匹や二...

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