第10章

瀬川葵視点

女子更衣室の隅で、私は体を丸めていた。スマホの画面には、次から次へと悪意に満ちたコメントが更新されていく。

「田舎の詐欺師!」

「金目当ての女に西坪私立高校のユニフォームを着る資格はない!」

「黒木家の恥!」

一つ一つの言葉が、なまくらなナイフのように心を抉っていく。膝を抱える。涙はとうに枯れ果て、残ったのは空虚な絶望だけだった。

もう、諦めた方がいいのかもしれない。

明日は全国バスケットボール選手権――自分を証明するための舞台になるはずだったのに。なのに今、世界中が私を笑い者にしている。

「田舎育ちの娘がチャンスを掴めると思った?寝言は寝て言いな」

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