第7章

瀬川葵視点

午前三時。私は一人、西坪私立高校のバスケ体育館に立っていた。背中を伝う汗が、服をじっとりと濡らしている。

北図大学バスケ特待生。その言葉が、私の脳に焼き付いている。すべてのドリブル、すべてのシュートが、その目標に向かって燃え上がっていた。

下唇を噛み、ボールを構え、リングを狙う。指先でスピンをかけ、手首をしならせて――。

スパッ!

スリーポイント、百二十三本。足りない。全然、足りない。

次のセットに入ろうとした、その時。外から足音が響いてきた。心臓が喉まで跳ね上がる。

クソッ!

急いで照明を消し、体育館を闇に沈める。観覧席の陰にしゃがみ込み、荒い...

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