第8章

黒木悠奏視点

あのキス以来、俺の日々はまるで抜け殻のようだった。

瀬川葵を見るたび、彼女の柔らかな唇を思い出し、腕の中で震えていた感触をなぞり、俺の理性を吹き飛ばしかけたあの喘ぎ声を反芻する。くそっ、まるで青春期ののガキだ。

会議中も心ここにあらずで、頭の中は彼女の香りでいっぱいだった。千世大学の面接の最中も、彼女の肌に再び触れることを想像してしまい、集中できなかった。

何か手を打たなければ。

俺は、彼女を密かに助け始めた。

黒木家の影響力を使って、体育館のスケジュールを調整し、彼女がピークタイムに練習できるようにした。学校には最新のトレーニング器具を匿名で寄付し、...

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