第7章

二週間後、東野十川は家族に急かされ、温水始子とささやかな結婚式を挙げざるを得なかった。その間、彼の眼差しは虚ろで、まるで魂が肉体から離れてしまったかのようだった。

「あまり嬉しそうではないのね」

結婚式が終わった後、東野十川の母が心配そうに尋ねた。

「大丈夫だよ」

東野十川は機械的に答え、その視線は遠くへと彷徨っていた。

結婚後も、東野十川は温水宮子への想いに沈んだままだったが、夫としての責任を果たすことを強いられた。温水始子は表面上は細やかに気を配っているように見えたが、実のところ彼の生活の全てを掌握していた。

ある日、東野十川は書斎を整理していると、偶然隠されたフォ...

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