第9章:物語を語る

子供の言葉はいつも素朴で飾り気がないが、その一言一言が上田景川の心に深く響いた。彼は頭を垂れ、「パパとママの写真を見ることができるよ」と言った。

「約束するよ」

咲良は涙を拭い、笑顔を見せた。「うん!」

彼女は上田景川の腕から飛び出し、キッチンへと駆け込んだ。そして歓声を上げた。

「やったー!新しいケーキだ!」

月野里奈は彼女の期待に満ちた声を聞いて、微笑んだ。厚手のオーブンミットをはめ、オーブンを開けると、甘い香りが一気に広がった。よく嗅ぐと、甘いミルクの香りも感じられた。

彼女はケーキを取り出し、小さな皿に移してテーブルに運んだ。咲良はすでに手を洗って椅子に座り、大きな瞳でケ...

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