第6章
田中恵子の居場所を確保し、自室のワンルームに戻った途端、希が慌ただしくドアをノックしてきた。
「野宮、白さんがお呼びだ」
心臓が締め付けられ、指先が知らず知らずのうちに服の裾を握りしめていた。
「今、ですか?」
希は頷き、その眼差しには探るような色が浮かんでいた。
「何をした? 白さんがこんなに急に人を呼ぶなんて珍しいぞ」
私は首を振り、努めて声を平坦に保つ。
「いえ、何も。多分、田中恵子のことでしょう」
白さんのオフィスへ向かう道中、足取りはどんどん重くなる。しくじった覚えはないが、この場所ではどんな些細な異常も疑いの種になりかねない。白さんの洞察力は畏怖を覚える...
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