第6章

彩香視点

後ずさる、足がもつれる。路地裏はここで一層暗くなっている。街灯の光は届かない。私の足音が、コンクリートの壁に響く。

バッグの中に手を突っ込む。スタンガン。青海市を出る前に買った護身用の。でも指がうまく動かない。酔いすぎた。ファスナーが引っかかってる。

クソッ。なんでこんな路地に入っちゃったんだ。なんであんなに飲んだんだろう。

「まあ、そんなに照れるなよ」

男の一人が一歩近づいてくる。そいつからアルコールの匂いがする。千鳥足なのが見てとれた。

「可愛い子が一人歩きなんて。家まで送ってやるよ。な」

三人目が笑う。「そうそう、俺たちがすごくいい人から」

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