第10章

「まだ行かないの?住友満との約束時間まであと数分だよ」

平沢逸は氷川家の正門をまだ見つめている高橋空に声をかけた。

「焦ることはない。あの役立たずが品物を渡せなければ、俺は奴の舌を切り落とす」

「それに、さっきの葉原遥子の表情がどうも気になる」

高橋空は眉をひそめた。

「もういいよ、ほら、家の明かりもついてるし、夫婦の問題に首を突っ込むのはやめておこう」

余計な面倒は避けたいと、平沢逸は悠々と車を発進させ、その場を離れた。

その時、車に座っていた氷川晨は携帯が何度も振動するのに気づいた。

彼が携帯を手に取り、メッセージを見た瞬間、心臓が一瞬止まりかけた。

葉原遥子からの助け...

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