第164章

数日後、S市の気温は急激に下がった。連日の雨で空気は骨まで凍みるほど冷たく湿り、街全体が重苦しい霧に包まれたかのようだ。

一方、牙狩組織の方には当面新たな動きがなく、氷川グループやカーター家からの連絡も途絶えていた。S市の人々は変わらぬ日常を送り、全てが平穏を取り戻したかのように見えた。

マンションの一室。薬の匂いが立ち込める中、葉原遥子は分厚い毛布にくるまり、ソファの隅で小さくなっていた。鼻先を赤くし、掠れた声でぼやく。

「もう……やっぱり風邪ひいちゃった」

「元々体が弱いのに、夜中に川へ飛び込む先陣を切れば、風邪を引かない方がおかしい」

高橋空は軽く笑った。袖を少し捲り上げ、窓...

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