第200章

伏黒獅堂は口の端を歪めると、退屈そうに足元の空き缶を蹴り飛ばした。カラン、と乾いた金属音が、鼓膜を微かに刺す。

コンテナが積み上げられた分かれ道に差し掛かった瞬間、彼は爆発的な加速を見せた。片手を古びた煉瓦塀につき、身軽に宙へと躍り出る。風切音と共に翻るコートの裾が、三メートルもの高さを一瞬にして越えていった。着地と同時に前転して衝撃を殺す。その動きは流れる水のごとく滑らかで、フェンスから驚いて飛び立ったカラスだけが、彼の通った軌跡を知っていた。

「チッ、越えやがった!」

男の一人が声を潜めて毒づき、そばにいた雀斑の男に視線を向けた。

「どうする、これから」

「深追いは危険だ。こち...

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