第219章

その言葉に、月島葵は伏し目がちになり、瞳の奥に渦巻く昏い感情を覆い隠した。

彼女はもちろん覚えている。以前、氷川お婆様がくれたあの「好機」を。氷川晨に近づき、あまつさえ「特別な手段」を使ってでも氷川家の跡取りを身籠れと、暗に唆されたことを。

だが、氷川晨の警戒心は異常なほどだった。まるで泥棒でも見るかのような目で彼女を遠ざけ、彼女が差し出した茶でさえ、誰かに毒見をさせなければ口にしようともしない。ましてや、このところ彼が家に帰ってくる回数は、指折り数えるほどしかなかった。

酒に薬を盛ろうとしたこともあったし、彼の寝室で催淫効果のある香を焚いたことさえある……。

しかしそのたびに氷川晨...

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