第26章

葉原遥子は書類をもう一度丁寧に確認し、書類の下に押された赤い印章に気づくと、S市内を車で五、六周も走り回りたいほど興奮した。

彼女は父親が残した遺産の一部と凍結解除されたお金でこのビルを購入したのだが、最近は氷川晨の監視が厳しく、自由に動けないし、葉原家の人に知られたくもなかったので、こっそり高橋空に頼んでこの件を代行してもらった。

もちろん、相応の報酬は支払った。

「後で見に行かないか?」と高橋空が言った。

「ええ、絶対行かなきゃ」葉原遥子は春風得意の笑みを浮かべた。

平沢逸はこの二人の掛け合いを見て、舌打ちしながら尋ねた。「葉原さん、なぜ突然ビルなんか買ったんですか?ホテルにし...

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