第67章

葉原遥子の言葉が終わるや否や、情熱的な音楽が再び鳴り響き、人々は再び狂乱の渦に巻き込まれた。

その時、廊下から聞き慣れない、それでいて慌ただしい足音が聞こえてきた。葉原遥子は素早く高橋空の手を引き、テラスの反対側へと駆け出した。彼女が身を屈めて太いロープを取ろうとした瞬間、高橋空にそっと手首を掴まれた。

「間に合わない」高橋空が低い声で言った。

その言葉に、葉原遥子の瞳に一瞬、戸惑いの色がよぎる。顔を上げると、氷川晨の手下たちがすでに追い付き、彼女たちの向かい、そう遠くない場所に立っていた。

手下たちが口を開くより先に、高橋空は力強く彼女の腰を抱き寄せ、腕の中に庇うと、わずかに膝を曲...

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