第9章

高橋お爺さまの視線が突然、葉原遥子と彼女の後ろにある金魚鉢に注がれた。

彼の表情が柔らかくなり、数歩前に進み出して言った。「この金魚鉢は君が取り替えたのかい?」

葉原遥子は一瞬きょとんとして、頷いた。

会場の灯りが彼女の美しい髪に降り注ぎ、意外なほど柔らかな美しさを醸し出していた。

「やれやれ、年を取ると物忘れが激しくなってな、すっかり忘れていたよ。ありがとう」高橋お爺さまは爽やかに笑うと、尋ねた。「君は葉原家のお嬢さんだね?」

葉原遥子は礼儀正しく答えた。「葉原遥子と申します。お初にお目にかかります、高橋お爺さま」

高橋お爺さまの顔にさらに笑みが広がり、感慨深げに言った。「時の...

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