第141章 罠

彼女は笑って、封筒をひょいと持ち上げるとコートのポケットへ滑り込ませた。

「考えておくわ」

加賀廷悟の目がぱっと輝く。抑えようのない狂喜が、瞳の奥で弾けた。

彼はうつむいてコーヒーを飲むふりをし、カップの縁でつり上がる口元を隠す。

――やっぱりな。

女は女だ。昔の男が弱みを見せれば、結局は情にほだされる。

池田暁月がまだ池田家にいた頃も、彼が少し甘い言葉をかけるだけで、あいつは一日中こっそり浮かれていたじゃないか。

池田暁月は喫茶店のドアを押し、外へ出た。

ガラス扉が背後で閉まった、その瞬間。彼女の顔に貼りついていた丁寧さが、風に剥がれる仮面みたいに消える。代わりに浮かんだの...

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