第142章 できた

8時ちょうど。彼は薬とアルコールの二重の作用で、ふわふわと天にも昇る心地になっていた。

廊下から足音。続いて、ルームキーがロックを解く「ピッ、ピッ」という電子音。

細い影がドア枠に手をつき、よろよろと入ってくる。長い髪をほどいたまま、身体がぐらりと揺れた瞬間、冷たい外気と、かすかな甘い香りが部屋に流れ込んだ。

「来たか」

加賀廷悟は掠れた、舌の回らない声で言い、肘で身体を起こして彼女へ手を伸ばす。

返事はない。彼女は玄関口に立ち、片手でシューズボックスに縋りついたまま動かない。

頭から足先まで熱い。体内で燻るような熱が脳を焼き、思考は真っ白だった。なぜここにいるのかも分からない。...

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