第148章 信頼

彼女の父親は海運業で財を成し、H市の二線どころの名家の中では名が通る。けれど彼女自身は、この界隈でいちばん肝心な「中枢の席」には、どうしても座れなかった。

今夜だってそうだ。

ようやく宮本明珠にくっついて、宴会場の前列に滑り込めたというのに――池田暁月が新井爺さんから衆目の前で腕輪を贈られるのを見た瞬間、胃の底から込み上げた酸っぱさが喉元までせり上がった。

どうして田舎から出てきた女が、新井爺さんにそこまで目をかけられる?

隣にいた取り巻きの女たちが、口元を押さえてくすくす笑う。

声は大きくない。だが、張り詰めた沈黙の中ではやけに耳障りだった。

宮本明珠は数歩離れた場所で、最初か...

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