第36章 独りよがり

池田花依は声をぐっと落とし、ほどよい迷いを混ぜて言った。

「さっきの……おじいさん。お姉ちゃんに、すごく親しげだった。肩、ぽんってして……病院の入口まで、わざわざ送ってた」

加賀廷悟は答えない。唇が刃みたいに細く結ばれる。

「廷悟兄さん」

花依の声はさらに柔らかく、まるで彼の胸の痛みを代わりに抱えるみたいだった。

「この前、ママと私でお姉ちゃんに会ったでしょ? そのとき……今の、お姉ちゃんのお母さんも一緒で。『すごく高そうなブレスレット、あげる』って言ってきたの」

「その時から、ちょっと変だなって思ってた。お姉ちゃん、ああいう家に行ったのに……どうして、そんな高そうなのが出てくる...

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