第39章 金蔓を捕まえた

後藤は一瞬、言い淀んだ。

宮本家に仕えて二十年。新谷若夜が、その僅かな異変を見逃すはずがない。

彼女は茶杯を静かに置く。声量は大きくないのに、芯がぶれない。

「後藤。何かあるなら、言いなさい」

「奥様……」

後藤はもごもごと口ごもったが、短く息を吐き、朝の出来事を包み隠さず話しはじめた。

宮本明珠に先に呼び出されたこと。池田暁月がひとりで門まで歩いたこと。そこへ新井飛鳥の車が現れたこと。

大げさに盛るでもない。だが、若夜には十分だった。

客間は、長いこと沈黙に包まれる。

窓から差し込む陽が若夜の頬を撫で、目尻の細い皺まで浮かび上がらせた。表情は崩れない。ただ、膝に置いた手だ...

ログインして続きを読む