第52章 間違って別の人と寝た

彼の腕が彼女の背中を横切り、もう片方の手が後頭部を押さえつける。逃げ場のない力で、胸元へ――ぎゅう、と深く縫い付けるみたいに抱き込まれた。

顎が彼女の頭頂に落ち、息は荒く重い。燃え移ったみたいに胸板が熱を持つ。

池田暁月の手が宙で止まった。三本目の針が、落ちない。

背中は冷たい壁。目の前は、輪郭のないほど燃え盛る炎。どちらへも動けず、ただ挟まれている。

離れるべきだ。突き放すべきだ。三本目を打って、彼を正気に戻すべきだ。

理性は手順を一つずつ、きっちり並べ立てる。なのに指先が、針柄に貼りついたまま降りてこない。

どくん。

心臓が一拍速くなる。二拍、三拍。

押し返しもしない。抱...

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