第9章 婚約は誰のものだ

 

「婚約破棄だと?」新井爺様が彼を睨みつけた。

「この縁談を破棄して、別の女を娶る? そんなの余計に駄目だ。世間がどう言う。新井家は掌返しで、宮本家の娘ふたりをまとめて踏みにじった――そう笑われるぞ」

新井飛鳥は黙った。

新井爺様は大きく息を吐き、「宮本家にどう顔向けすりゃいいんだか……」とぶつぶつ零す。孫の表情を窺って、またひとつ溜息。

このバカが、誰かひとりに入れ込むなんて滅多にない。祖父としても、頭ごなしに水を差すのは忍びなかった。

「いい。ここはお前が口を出すな。わしが考える」新井爺様は手をひらひら振った。「とにかく軽はずみな真似はするな。いいな?」

新井飛鳥は小さく頷...

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