第23章 鈴木清との狂気

鈴木清がなぜあれほど俺を信頼してくれたのか、それを知ったのはずっと後のことだった。

一人の女が、旅の途中で嵐に遭遇した。暴風は船を破壊し、彼女の体はこの人気のない孤島へと打ち上げられた。

目を覚ますと、周囲は深く恐ろしい密林で、耳には獣の咆哮が響く。幸運にも木の実や飲める水源、さらには洞窟まで見つけたものの、この世界に自分一人しかいないという孤独感は、彼女の心を崩壊寸前にまで追い詰めていた。その時の彼女は、ひどく絶望していたという。

特に夜、密林を吹き抜ける強風が立てる、ザワザワという音は悪魔の囁きのようだった。あの時、信頼できるパートナーがいてくれたら、自分に安心感を与え、共に...

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