第27章 双方向

佐久本令朝はじっと長谷川寂を見つめた。

その真剣な眼差しに、長谷川寂は内心居心地の悪さを感じていた。やがて、佐久本令朝が口を開いた。「実は私、古川言に大きな期待を寄せていたんです」

「菅原警部が彼と立川婉の関係を突き止められたのは、本当に意外でした」

ここ数日、佐久本令朝はずっと考えていた。なぜ立川婉はあのような絵を描いたのか、と。

理屈で言えば、彼女は幸せなはずだった。

綾瀬子濯は彼女を愛し、守り、二人は孤児院で共に育った。その絆は金銭によって打ち砕かれることもなく、常に互いを想い合っていた。

なのに、なぜ立川婉の絵は死の気に満ちているのだろうか。

心理学的な作用で、誰もがそれ...

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