第28章 軽いキス

佐久本令朝は迷わず電話を切った。

立川婉の作品には、いくつかの建物がはっきりと描かれている。それらの建物は業火に包まれ、燃え盛る炎が空の半分を赤く染めていた。

佐久本令朝は以前、三〇一医院の配置を注意深く観察したことがある。立川婉の作品に描かれたものと、ほぼ瓜二つだった。

つまり、立川婉は三〇一医院の存在を確実に知っていたのだ。

そして今、周防璇も姿を消した。もし綾瀬子濯が古川言への報復を企んでいるのなら、周防璇は間違いなくここにいる。

佐久本令朝は産婦人科へと直行した。

立川婉の絵には、非常に多くの手がかりが残されている。

彼女はスマートフォンを取り出し、古川言の家で撮影した写...

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