第73章 サプライズ

佐久本令朝は彼女を見上げた。

阿部書竹の表情はひどく真剣で、声色もどこか違う。「彼の秘密を探っちゃ駄目。彼の秘密は、彼にも、あなたにも、背負いきれない」

佐久本令朝は意に介さない。「どういう意味?」

長谷川寂の秘密?

彼にどんな秘密があるというのか?

十年前の事件は、それほどの大事件だったとでも?

佐久本令朝は最初、彼の秘密に好奇心はなかった。

だが、阿部書竹にそう言われて、少し興味が湧いてきた。

「彼の事情に首を突っ込まないで」阿部書竹は言った。「朝ちゃん、あなたは蚊帳の外にいるべきよ。なんたって、彼はあなたの逃げ道になるんだから」

佐久本令朝はしばし沈黙し、ふと嘲るように...

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