第75章 火源

長谷川寂はスマホを振ってみせた。「送った」

長谷川寂が背を向けて立ち去ろうとした。

女が彼を呼び止めた。「まだ中華クレープの代金を払ってないわよ」

長谷川寂は一口かじり、頬を膨らませた。「金がない。一銭も残ってねえ」

「あんたんとこの堀田の旦那は心が黒すぎる!」

女はぶつぶつと文句を言った。「でも、こっちも細々とやってる商売なのよ。あたしたちみたいな肉体労働者から、警察がタダで食い物を持ってくなんてことあるかい!」

長谷川寂はそれを聞いて、こめかみがピクリと引き攣った。

これは脅しか?

間違いなくそうだろう!

その時、細く白い手がすっと伸びてきて、長谷川寂の代わりに代金を支払...

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