第6章

「はい?」

「いいえ、あの子には続けさせるべきよ。経験こそが最良の教師というものだから」

祖母はまた電話を切った。

「今の、何?」と私は尋ねた。

「大輔はこれから、湾岸の石油流出事故の浄化作業について、個人的に責任を負うことになる契約にサインするところよ。とてつもなく高くつく石油流出事故のね」

その日の午後、私は祖母に連れられて、大輔の「新しいオフィス」を見に行った。そこは実に立派な場所だった――床から天井までの窓、高価な家具、そして『川村大輔、社長兼CEO、黎明環境ソリューションズ』と書かれたネームプレート。

大輔は巨大なデスクの向こうで、ちゃんとサイズの合ったスーツを身...

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