第5章

あの忌々しい録音機を、私は作業机の一番目立つ場所に置いた。黒いキューブは薄暗い照明の下で冷たく光っている。床には、昨夜の怒りで引き裂いたキャンバスの破片が散乱し、中身を絞り出されて血を抜かれた死体のように平たくなった絵の具チューブが転がっていた。

ドアのチャイムが鳴った。

ドアスコープから覗くと、外には恵介が立っていた。赤ワインとテイクアウトの袋を手にしている。その顔には、かつて私が本物だと信じていた罪悪感の表情が浮かんでいた。

私はドアを開けた。

「瑠奈、昨日のことがあってから一睡もできなかったんだ」恵介はアトリエに足を踏み入れ、すぐに室内の惨状に目を走らせた。「僕たち、...

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