第64章 彼女が不治の病にかかったとは信じない

医者はなおもくどくどと説教を続けていたが、その場にいた数人の頭の中は、どん、と音を立てて爆ぜた。

「不治の病……?」

早川潤は焦点の合わない目で立ち尽くし、身体がぐらりと大きく揺れる。

「もう時間がないって……どうしてだよ。沙梨はずっと元気だったじゃないか。なんで、そんな……」

言葉の途中で声が詰まり、喉の奥がひきつった。

夏川翔太も顔色を変え、いつもより早口になる。

「先生、何かの間違いじゃないですか? まだ若いのに、そんなはず……!」

翔太が医者の襟元を掴んだ手を、医者は淡々とほどいた。深いため息。

「不治の病は、特別な人だけがかかるものじゃありません。誰にだって起こり得...

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