第65章 まったくの偶然

伊藤沙梨の表情が、ふっと歪んだ。しばらくしてから、乾いた声を無理やり絞り出す。

「潤……お医者さん探しに行ってたの? 私、聞いてないんだけど」

早川潤はその変化に気づきもしない。熱のこもった目で彼女を見つめる。

「沙梨、気にしなくていい。君のためなら、俺はいくらでもやる。心からそう思ってる」

一拍置いて、今度は軽い調子で続けた。

「そういえば、これは村上真也に感謝しないとな。永街通りの路地に、世間から身を引いてる名医がいるって教えてくれたんだ。俺も探すの、かなり苦労したけど……やっと見つけた」

興奮した面持ちから、その医者をどれほど信頼しているかが伝わってくる。

伊藤沙梨の胸の...

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