第68章 前科を残してはならない

警官の嘲るような声には、露骨な蔑みが混じっていた。

早川潤は首を絞められた鶏みたいに、ぴたりと言葉を失う。

むき出しの顔がじわじわ赤くなり、首を突き出して叫んだ。

「沙梨は有名な女優で、しかもヴァイオリニストだぞ! あいつの手がどれだけ価値あるか分かってんのか? ただの小さな傷じゃない、将来に響くんだ!」

警官の侮蔑はますますはっきりし、夏川翔太の眉間にも苛立ちがにじんだ。

伊藤沙梨は、危うく悪態をつきそうになる。

彼女はそっと歩み寄り、涙を滲ませながら言った。

「翔太、潤を責めないで……潤は、私のことが心配なだけなの。分かるでしょ? 私、もうすぐオーディションがあるって……潤...

ログインして続きを読む