第9章

保健室の白いカーテンが午後の陽光に淡く黄色く染められている。私はベッドに腰掛け、手にはガーゼが巻かれていた。

「お前の母親は来なかった」

神代史人が窓際に立つ。逆光で彼の金髪はほとんど透明に見えた。

「上村先生は出張中だ」

私は黙って自分の手を見つめた。喧嘩の代償は、想像していたよりもずっと大きかった。

「こっちは俺が何とかしといた」

彼はため息をつき、私の目の前まで歩み寄る。

「だから言っただろ、面倒を起こすなって」

私は唇をきつく結び、床の一点を見つめる。

「俺を見ろ、温井昭子」彼の声には、抗うことのできない命令の響きがあった。

顔を上げると、彼の鋭い眼差...

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