第四十二章

建設現場は瞬く間に阿鼻叫喚の巷と化した。

黄色いヘルメットの男が狂ったようにナイフを振り回している。霧生澪がそちらへ向かおうとするが、補償を求める作業員たちに阻まれ、身動きが取れない。

「霧生社長、お下がりください!」

藤波が悲鳴に近い声を上げて霧生澪の元へ駆け寄ろうとする。SPたちは押し寄せる労働者を制止しながら社長を守らねばならず、現場は収拾がつかないほど混乱していた。

その隙を突き、黄色いヘルメットの男が包囲網を抜けて走り出した。

綾瀬茉莉は咄嗟に、その後を追った。

男は全速力で逃げていく。距離がどんどん開いていく中、綾瀬茉莉の視界に道端の煉瓦が飛び込んできた。

彼女は迷...

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