第173章 悪辣な立花佳織

最上階のオフィスを出て、立花グループの正門をくぐった瞬間――保坂心月の顔から、あの従順さは跡形もなく消えた。

無表情のままスマホを操作し、立花佳織の連絡先をすべてブロック、削除。二人をつなぐ糸を、迷いなく断ち切る。

続けて、別の番号へ発信した。

「前に言ってた海外移住、受ける。今すぐ手続き回して。三日以内にA市を出る」

一方そのころ。

保坂心月からの返事を待っていた立花佳織のスマホが、けたたましく鳴った。表示されたのは、市中心病院の医長。

胸の奥に渦巻く苛立ちを押し殺し、佳織は通話を取る。声は露骨に不機嫌だった。

「……何?」

「立花嬢。お知らせしなければならないことがござい...

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