第24章

立花柊の住むマンションの前に、黒いマイバッハが一台停まっていた。周囲の素朴な空気から、妙に浮いている。

運転席には季原青陽。ハンドルに片手を預け、機嫌よく鼻歌まで鳴らしている。

本来なら、補佐の立花楓が柊に栄養補助の品を届けるはずだった。だがタイミングが悪い。青陽が瀬戸北斗の執務室に顔を出したその瞬間、楓のほうに急ぎの案件が入った。

結果、瀬戸北斗が「じゃあお前行け」と、そのまま青陽に投げたのだ。

青陽としても渡りに船だった。立花柊には前から興味がある。だから二つ返事で引き受けた――はずなのだが。

「……」

ルームミラー越しに見ると、瀬戸北斗が後部座席にどっしりと座ったまま、微動...

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