第26章

「瀬戸社長、コーヒーです」

立花柊が近づき、うやうやしくコーヒーを無垢材のデスクへ置いた。

澄んでいて、どこか人を誘うような鸢尾花の香りが、またふわりと鼻先を掠める。

それだけで、不思議なくらい胸の底のざらつきが撫でられていった。

瀬戸北斗は表情をわずかに和らげ、カップを持ち上げて一口含む。

そして、何でもないふりをして立花柊に問う。

「立花補佐。今朝、季原青陽に朝飯を作ったのか」

――我慢に我慢を重ねた末、結局、口にしてしまった。

立花柊は一瞬きょとんとしたが、すぐに正直に答える。

「今朝は季原殿の車で出社しました。……そのお礼みたいなものです」

そういうことか。

瀬...

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