第34章 賭けに出る

立花柊は認めざるを得なかった。

瀬戸北斗の、あの廃れきった姿を目の当たりにした瞬間――胸の奥が、確かに揺れたのだ。

ホテルの一夜以来、彼に特別な感情があったわけじゃない。

むしろ、自分の正体が露見することを恐れていた。

けれど、何度も接していくうちに。

そしてA市で、命を預け合うような場面をくぐり抜けたあの日以来。

瀬戸北斗は、彼女にとって「上司」なんて言葉では片づけられない存在になっていた。

あのとき病院で――。

二十年以上の「姉妹」の情を手放すのがつらくて、立花柊は平気なふりをした。胸が痛んでも、保坂心月を選んでやった。

昔からそうだ。

理不尽に耐えることに、慣れすぎ...

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