第36章 一騒動

立花柊は黙り込んだ。

季原青陽の善意が、痛いほど伝わってくる。目の奥にある同情も、隠せていない。だからこそ、胸が余計にきしんだ。

季原青陽と知り合って、まだ一か月にも満たない。普段の接点も多いわけじゃないのに、彼は彼女が倒れたのを見た瞬間に駆け寄り、病院へ運び、検査にも付き添い、結果が出るまで一緒に待ってくれた。ここまでずっと、あちこち走り回って。

それなのに、保坂心月は二十年以上の付き合いだ。

その心月が、利のために、階段室に彼女を置き去りにした。

ふいに息が詰まる。

体の痛みなんて、胸の奥を刺す痛みに比べたら、どうでもよかった。

心月がそこまで手厚く看病してくれるとは、最初...

ログインして続きを読む