第56章 罠

周りが保坂心月の知り合いばかりだと悟った瞬間、立花柊は迂闊に動けなくなった。脚に鉛を流し込まれたみたいで、足を出すたびに拒絶するように重い。

奥の間の扉は半開きだった。保坂心月が押し開けて入ると、表情がすっと柔らかくなる。

「周防社長~~」

四十代半ばの男がソファに腰かけていた。オールバックに、仕立てのいいスーツ。手首のスイス製の時計が照明を受け、控えめに光を返す。

顔立ちは平凡だが、まとっている空気が違う。商売の泥を何年も浴びてきた、食えない男の気配。

「来たか」

周防徳勝は二人を見やり、立花柊のところで一瞬だけ視線を止めた。目の奥に、ちらりと「いい」と評価する色が走る。

「...

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