第58章 あの女は誰だ

季原青陽は廊下の壁にもたれ、瀬戸北斗が本当に立花柊を抱えて出てくるのを見た途端、口をあんぐりと開けた。卵が丸ごと入りそうなほどだ。

「マジかよ……ほんとに……」

「車出せ」瀬戸北斗が遮るように言う。「病院だ」

「お、おう。わかったわかった!」

青陽は我に返ると、慌てて先に駆けていった。

瀬戸北斗は立花柊を抱いたままクラブを出る。女は顔を彼の胸にうずめ、熱い息を吐いた。酒の匂い。その奥に、かすかに鸢尾花の香りが混じっている。

瀬戸北斗は視線を落とす。墨のように深い眼。

たった一日だ。たった一日で、こいつは自分をこんな状態にまで追い込んだ。

もし今夜、俺がここにいなかったら。

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