第62章 母さん、助けてください

立花柊は唇を開きかけた。けれど、喉元まで出かかった言葉はそのまま飲み込まれる。結局、胸の内で何度も瀬戸北斗に告げてきた、たったひと言だけが残った。

「……ありがとう」

その言葉に、瀬戸北斗の足がぴたりと止まる。

だが彼は何も返さず、そのまま背を向けて立ち去った。

廊下には、もう保坂心月の姿はなかった。

写真と居場所を立花佳織に送りつけたあと、彼女は廊下の突き当たりの角へ身を潜めていたのだ。

握りしめたスマホの画面はまだ明るい。

そこに表示されている返信は、たったひと言。

「そこで待ってなさい!」

保坂心月はその文面をじっと見つめた。

瞳の奥で、どろりとした狂気が濃さを増し...

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