第64章 保温ポット

立花楓は表情ひとつ変えずに言った。

「瀬戸社長は、立花様のお身体のことをずっと気にかけておいでです」

その言葉に、立花柊は一瞬きょとんとした。だが、すぐに礼儀正しい笑みを浮かべて小さく頷き、改めて新谷寒弥のほうを見る。

「寒弥さん、車が来たので、先に失礼します。また連絡しますね」

「……ああ」

新谷寒弥の声は、どこか乾いて聞こえた。

「着いたらメッセージをくれ」

ちょうどそのとき、タクシーが立花柊の目の前にすっと停まる。

立花柊はそれ以上何も言わず、そのまま車に乗り込んだ。

新谷寒弥はその場に立ち尽くし、病院の門を抜けて車の流れに紛れ、やがて見えなくなるタクシーを黙って見送...

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