第9章

それから二十分後。私はいつもの角のボックス席で、兄と向かい合って座っていた。兄はノートパソコンで、粒子の粗い白黒の映像を再生している。

「建物の防犯カメラが、あの夜、何かの動きを捉えてたんだ」亮はそう言って、画面を私の方に向けた。「ほら」

タイムスタンプは午後九時二十三分、停電が起きたのとほぼ同じ時刻だ。私たちの共有ラウンジの外の廊下を、ぼやけた人影が素早く通り過ぎていくのが見えた。

「誰だか分かる?」

「いや、無理だな。解像度がひどすぎるし、暗すぎる。だが、こっちを見てみろ」彼は別のカメラの映像に切り替えた。「こっちは、電気が復旧してから十分後くらいに、裏口から出ていく誰かを捉...

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