第4章

伊佐子視点

「伊佐子?どうして戻ってきたの」

私は大きく息を吸い、声を落ち着かせようと努めた。「話があるの。春奈のことで」

真琴の表情が瞬時に変わった。彼女は一歩下がって私を中に招き入れた。リビングでは、正雄が年季の入った革張りの椅子に座って新聞を読んでいた。私の声を聞き、彼はゆっくりと顔を上げた。

「何の話だ」その口調は苛立っているようだった。

私はリビングの中央に立った。かつては私の家だったこの場所が、今ではひどくよそよそしく、冷たい場所に感じられた。

「春奈の母親としての責任を、もう負いたくありません」。静かなリビングに、私の声はことさら鮮明に響いた。「海斗さんにすべ...

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