第282章君にだけちょっかいを出す

彼女は知らない。自分の羞恥と怒りに満ちた眼差しが、男の目には少しも威圧感を与えていないことを。

それどころか、何とも言えない甘えたような色気を漂わせているだけだということを。

朔也は薄い唇の端をくいっと上げた。

紗雪は呆れて言葉も出ない。

彼女はもう彼を見ようとせず、さっさと書類にサインをした。

朔也もサインを終え、司に見せる。

司は確認を終えると、その書類をしまった。

朔也はここでようやく口を開いた。「これでサインは済んだ。後で鈴と陸斗を連れて、うちの婆さんと食事をしてくる。その後、ちゃんと送り届けるよ」

「ええ、構いません」

司に異論はない。

なにしろ、これは昨夜、彼...

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